『セリヌンティウスの舟』
あっという間に読み終わる。
ダイビング中のある「事件」により、信頼で結ばれた
六人の男女。二年後、突然訪れた一人の死――。
以前の作品から感じていたことだが、この作者の
文章の土台にある仲間とか恋愛とか、そも人間関係に
関わる感覚はすこし変わっている。
少なくとも、“最大公約数”的ではない。
『水の迷宮』のように、ファンタスティックな話だったり、
仮定の連続でごりごりと押す『扉が閉ざされるまで』
などでは(背景なので)さほど気にならなかったが、
この作品の場合、仲間に対する信頼がそのまま
謎解きのベースとして扱われているため、私には
違和感が強く感じられた。
推理小説内の「論理」とはあくまで疑似論理
(こじつけ、でもハリボテ、でもいいのだが)であって
読者が気持ち良く作品内を歩くための足場だが、
なんだかこう、この作品の場合、地面そのものが
斜めになってるみたいで、酔っちゃいそうなんである。
ラストは、この終わり方しかないだろう、と思うところへ
収束するのであるが、この話をよくここまで引っ張るなあ、
というその技巧には確かに感心します。
#ベタで陳腐で後引きの悪い人間関係、を意識的に
#嫌悪するむきには、この作者のものはお勧めです。
#今後、自作の傾向を逆手に取った驚かせ方まで
#してくれたら面白いんだけど・・・
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Comments
朝、この書評を拝見して、早速 本屋で買ってきました。
1時間ちょっとで読めちゃうって、どういうこった(^^;)。
しかも、読んでる間中ずっと、私ゃ
「あんたたち、オバカさんですね?」
「どうしてそういうことで悩めるですか?」
「キショイとは思いませんか?」
とツッコミっぱなし。
確かに、この白樺派のような、一般人を凌駕したキショさを作者が意図的に操れるようになると、もっと面白くなるでしょうね。
そもそも「走れ、メロス」そのものにも、感動なんかしたことないもんなぁ(^^;)>私。
Posted by: 葵 | 2005.10.26 at 12:37 PM
ああああ、すみません(>__<)
そうなんです、端的にいってかなりキ○ョイんです(^^;)
白樺派とは思いつきませんでしたが、でも確かに(さすが葵さんだー)。
しかしこの本、「本格ミステリの新しい可能性」「これぞ本格ミステリ」と称揚しているネット書評も目にしますもので、私にはもう新しい可能性とやらが見えなくなっているのか、と、項垂れるばかりです(嘘)。
Posted by: 果桜史彼 | 2005.10.27 at 07:23 AM